Wine Spectator の2007年7月26日付け記事に面白ものがあったので掘り出してみました。
コルクの周りの空気をサンプリングし、ブショネを検知する機械がワインスペクターの大賞を取ったという話。
この話題はやや古いですが、情報として一応UPしておきます。
TCAの検出
念のため確認すると、ブショネは、2,4,6-トリクロロアニソール(TCA)の汚染によって引き起こされるかびの香りのことで、英語ではコルキー(corkey)と呼ばれています。
ニュージャージー州のクリスタルスプリングスにある「ラトゥール」というレストランのオーナーがワイン醸造学を教える大学として最も有名なUCデイビスの先生協力を得て開発したというものです。
レストランラトゥール自体はゴルフクラブに隣接する高級レストランのようでなので、ワインを開けたときにブショネだとまずいということで開発したものと思われます。
検出の仕組み
仕組みはシンプルで、ワインボトルのネックを覆うようにキャップをかぶせて、内部を真空にしてからコルクから出てくる空気を吸い取ってガスクロマトグラフィで分析するというもののようです。最近米国の空港の手荷物検査で見かける(時々手荷物検査で抜き打ちでやられることもありますが)、布で手荷物を拭かれてその布を機械に入れると爆発物かどうかすぐわかるという機器のTCA検出版と考えればぴったりかと思います。
検出にはガスクロマトグラフィーと質量分析の両方を使用するので15−20分くらいかかるらしいです。
機器の性能
検出性能的には1pptでTCA汚染を検出できるらしく、一般的な人間の検出能力3〜4 pptより優秀らしい。ちなみに犬は人間の100万倍とか1億倍とかいわれておりこのあたり臭いセンサーはまだまだ発展途上といったところでしょうか。
コスト
ところで、この機器を使ったテストには時間がかかるため、レストランで気軽に利用できるものでもなく、高額ワインのオークションでのチェックやハイエンドの個人コレクターに利用してもらうユースケースを想定している様です。また、ワイン価値の10%で有料の検査請負も考えているとのことでいいものができればこうしたサービスもあり得るかもしれません。
ただし、オークション会社がこの機械を使用するかどうかは別の問題で、機械検査したからといって結果を保証できるものでもなく、そもそも、汚染の可能性が高いとの結果が出たとしても買い取りやオークションへの出品を拒否するのかというのはまた違った問題が出てきそうです。
値段的には5万ドル(5百万円)程度は必要らしく、普及には壁が高そうです。ただし、最近は検査機器の小型化・高性能化が進んでいるのでこの記事が出て以降の技術革新を踏まえるとそろそろ実用的な商品が作れる可能性はあるかもしれません。